
秋に代表される感染症は?と言えば、何だろうと思う人も少なくありません。
なぜなら秋には、冬のインフルエンザのように、大流行を遂げる代表格の感染症がないからです。
しかし、油断は禁物です。
夏に流行する様々な感染症は9月終わりから10月頃まで尾を引き、冬に猛威を奮う感染症が晩秋から発生します。
つまり、秋は、ちょっとした油断から病原体を侵入させてしまう危険性の高い時期なのです。
また、この時期にしっかりと抵抗力をつけておかなければ、冬場に猛威を奮うウイルスに感染しやすくなります。
この時期を上手に乗り越えて頂くために、今回は秋に気を付けたい感染症についてご紹介いたします。
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1.猩紅熱(しょうこうねつ)

猩紅熱は、晩秋から春にかけて多発する溶連菌感染症の一つです。
2歳から10歳くらいまでの小児が感染しやすく、中でも4~6歳の小児の感染が最も多くみられます。
■猩紅熱の原因や感染経路は?
猩紅熱は、A群連鎖球菌という細菌に感染することで発症します。感染者の咳やくしゃみ、唾液などの飛沫によって、人から人へと感染します(飛沫感染)。
■猩紅熱の初期症状は?
咽頭炎や扁桃腺炎による喉の痛みと高熱、嘔吐などの症状が現れます。熱は、39度前後と高く、頭痛や腹痛、関節痛などの症状がみられることもあります。
その後、痒みを伴った赤い発疹が全身に現れ、舌にはイチゴのようなブツブツ(イチゴ舌)ができます。
「発疹が口のまわりだけ発現しないこと」と「イチゴ舌」は猩紅熱の特徴です。
症状が現れたら、まず医療機関で適切な治療を受けることがお勧めです。
■猩紅熱の対処法は?
医療機関では、ペニシリン系の抗生物質が処方されます。猩紅熱が重症化すると中耳炎や腎炎などの合併症を併発する危険性があるので、医師の指示通りにお薬を服用することが重要です。
家庭では、安静が基本です。
喉に炎症があるので、喉越しのよい食品を選び、脱水症状に陥らないよう水分補給に心がけましょう。
入浴は解熱するまでひかえ、湯につけたタオルを絞ってからだを拭き、清潔にします。
■猩紅熱の予防法は?
「手洗い」と「うがい」が基本です。猩紅熱は、感染者の飛沫で感染しますから、外出時にはマスクを着用しましょう。
溶連菌は非常に感染力の強い病原体ですから、家族内に感染者がでた場合は、親や兄弟にも感染する危険性があります。
そのような場合には、小まめに手洗いやうがいをし、感染者のお世話をするときには、マスクを着用しましょう。
二次感染が疑われた場合には、早急に医療機関で受診し、治療を受けましょう。
2.ノロウイルス感染症

ノロウイルス感染症も猩紅熱を同じように、晩秋から春先にかけて流行するウイルス性の胃腸炎です。
11月を迎えると急激に増加し始め、3月終わり頃まで猛威を奮います。
乳幼児から高齢者まで年齢を問わず感染します。
ノロウイルスは感染力が非常に強いため、集団生活を営む場所では特に注意が必要です。
■ノロウイルス感染症の原因や感染経路は?
ノロウイルス感染症は、ノロウイルスという病原体に感染することで発症します。ノロウイルスは、牡蠣など二枚貝を摂取することで起こる食中毒の原因菌として有名ですね。
しかし、「牡蠣などを食べていないから大丈夫」というわけではありません。
ノロウイルスは、感染者の糞便や嘔吐物など汚染物を触った手を介して感染することもあります。
また、汚物が乾燥するとウイルスが空気中に浮遊ので、それを吸い込んでしまうと感染してしまいます。
■ノロウイルス感染症の初期症状は?
一般的には、突然にして嘔気や嘔吐が発現し、まもなくにして下痢や腹痛が起こります。ときおり、発熱を伴うこともあります。
これらの症状は1日に何度も繰り返し起こりますが、人によっては無症状または軽度の風邪程度で治まってしまう場合もあります。
いずれにしても2日前後で回復します。
■ノロウイルス感染症の対処法は?
嘔吐や下痢によって体内の多くの水分が排泄されてしまうので、「水分補給」が必須です。医療機関で受診しても、ノロウイルスに対する特効薬はなく、対症療法(症状にあった治療)がおこなわれます。
ただ、抵抗力の無い乳幼児や高齢者の場合は脱水症状に陥りやすく、重症化してしまう危険性があるので要注意です。
「嘔吐して水分が補給できない、おしっこの量が極めて少ない」というときは脱水が疑われます。
そのようなときには、早急に医療機関で適切な治療を受けましょう。
家庭では、水分や栄養補給が大切ですが、一つだけ注意事項があります。
ノロウイルスを完全にからだの中から排除することが重要なので、医療機関でも下痢止めは処方されません。
下痢が続くからといって下痢止めの薬を服用すると、かえって状態が悪化しますから、自己判断で薬を服用することは止めましょう。
■ノロウイルス感染症の予防法は?
ノロウイルスは非常に感染力が強いウイルスですから、「小まめな手洗い」が必須です。石鹸を用いて隅々まで洗います。
手洗いの後、アルコール手指消毒剤などを用いて手指の消毒をおこなっておくと効果的です。
家族内に感染者がでた場合は、二次感染を防ぐための予防が必要です。
汚物を処理する際には使い捨て手袋やマスクを着用し、汚物はビニール袋で密封して捨てましょう。
また、ウイルスが飛散しないように汚物が付着した場所は、塩素系薬剤(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒しましょう。
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3.RSウイルス感染症

RSウイルス感染症は、晩秋から春にかけて流行する呼吸器感染症です。
2歳までには、ほぼ全ての乳児が感染します。
特に、感染の多くは、生まれて初めて迎える冬場にみられるそうです。
■RSウイルス感染症の原因や感染経路は?
RSウイルス感染症の原因菌は、RS(RNA)ウイルスです。飛沫感染や接触感染で人から人へと感染します。
このウイルスに感染しても終生免疫は成立しないため、何回も感染を繰り返すことがあります。
また、新生児はお母さんから免疫をもらって生まれてきますが、RSウイルスには効果がないため、新生児でも感染します。
■RSウイルス感染症の初期症状は?
多量の鼻水と咳が現れます。発熱を伴うこともありますが、高熱が続くことはほとんどありません。
炎症が気管支まで拡大すると、喘鳴(ゼーゼーヒューヒュー)が起こります。
重症化すると細気管支炎を起こし、呼吸困難を引き起こしてしまうことがあります。
初回の感染は、重症化しやすい傾向にあるといわれています。
特に新生児が感染すると、無呼吸発作を発症してしまうことがあるので注意が必要です。
■RSウイルス感染症の対処法は?
RSウイルスに対する特効薬はないため、医療機関では対症療法がおこなわれます。RSウイルス感染症は、誰でも一度は感染する病気ですが、決して侮らないことです。
呼吸困難が激しい場合は、入院治療を要することもあります。
また、RSウイルス感染症が原因で、中耳炎や脳症などの病気を併発しまうこともあるのです。
重症化する前に、医療機関で適切な治療を受けることが望ましいと思われます。
家庭では、保温に気を付けて安静にし、水分や栄養補給を心がけながら経過を注意深く観察しましょう。
■RSウイルス感染症の予防法は?
RSウイルスに対するワクチンはありませんので、「手洗い」が必須です。おもちゃやおしゃぶりなどは常に消毒しておきましょう。
RSウイルス感染症が流行しているときには、人混みへの外出は出来るだけ避けましょう。
また、RSウイルスは、大人にも感染することがあります。
お母さん自身が感染しないよう、外出時にはマスクを着用するなど、感染防止を心がけましょう。
4.マイコプラズマ肺炎(マイコプラズマ感染症)

マイコプラズマ肺炎は、一年を通して発生していますが、中でも晩秋から春にかけて多発します。
6歳から12歳までの小児に好発しています。
マイコプラズマは、細菌より小さくウイルスより大きな病原微生物です。
乳児が感染すると、軽い風邪レベルで治まることが多いですが、幼児になると肺炎に進行する確率が高くなるそうです。
小児では細気管支炎を発病する危険性があるので、注意が必要です。
■マイコプラズマ肺炎の原因や感染経路は?
マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマ・ニューモニエという病原体に感染することで発症します。感染者の咳や唾液の飛沫によって人から人へと感染します(飛沫感染)。
特に家族内感染が多くみられるので、家族に感染者がいる場合は、二次感染の予防が必須です。
■マイコプラズマ肺炎の初期症状は?
発熱(39度前後の高熱)、咳、頭痛、倦怠感など風邪によく似た症状が現れます。中でも、咳が激しく、痰が少ないのが特徴です。
症状が回復しても、咳だけは3~4週間続きます。
喘息のような喘鳴(ゼーゼーヒューヒュー)が起こることもあります。
肺炎といっても全身状態はそれほど悪くないことが多いです。
しかし、中耳炎や脳炎などの合併症を引き起こしたり、重篤な急性呼吸不全を誘発することがあるので、完治させることが肝要です。
■マイコプラズマ肺炎の対処法は?
軽症の場合は、自然治癒することもあります。医療機関では、マイコプラズマに効果のある抗生物質の処方がおこなわれます。
家庭では、水分や栄養補給を心がけましょう。
ただ、症状があまりにもひどく、飲食が出来ない場合は、医療機関で相談してください。
症状が落ち着くまで、入院治療が施されることもあります。
■マイコプラズマ肺炎の予防法は?
「手洗い」「うがい」が基本です。外出は出来るだけ控えましょう。
どうしても外に出ないといけないときには、マスクを着用してください。
また、家庭内に感染者がいる場合は、別室で過ごすなど、接触する時間を出来るだけ少なくします。
ただ、感染者が乳幼児や小児の場合は、そういうわけにはいかないので、マスクをして接してください。
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まとめ
いかがでしたか?感染症は一年を通して発生しています。
秋のように、夏と冬の感染症がまたがってくる季節は、要注意ですね。
どのような時期でも、感染症の予防には、まず健康づくりです。
バランスのとれた食事、十分な睡眠、適度な運動こそが、感染症予防の基本です。
この機会に、生活習慣を見直して、元気なからだづくりをお勧めします。
最後までありがとうございました。
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